こんにちはアラフォー主婦です。
今日は私が看護学校を卒業してすぐ就職した職場にいた先輩の話をします。
その人は女性で、年齢は確か私よりも3歳くらい年上だったと思います。
その先輩はなんでもはっきり言う、新人には少し恐れられている先輩でした。
私がその人と働いたのはたったの半年でしたが、10年以上経った今でも忘れられない先輩です。
Contents
持病があった先輩
その先輩(以下K先輩)は、再生不良性貧血を患っていました。
その為夜勤は免除されていましたし、具合が悪くて遅刻したり、休んだりすることもありました。
遅刻して来た時、むくんだ顔で不機嫌そうに出勤し、片手には500のペットポトルの飲み物が5本入ったビニール袋を持参して来ました。
K先輩の言うには、「先生が水分とった方がいいよって、近くのコンビニまで行って買って来てくれた。」そうです。
先生というのはK先輩の主治医のことです。
K先輩は大きい病院に通っていると言っていたので、外来をこなさなきゃいけない医者にそんな時間あるかな?と正直思いました。
いつも昨日会った友達のおもしろ話をしてくるK先輩
K先輩は小話が好きでした。
日勤が一緒になるといつも昨日友達がどうした、こうした、という話をしてくれました。
1番印象に残っている話は、仲のいい後輩(女性)に告られた。という話でした。
私は、人生そういうこともあるかもしれないけど、その話は嘘かな、と正直思いました。
なんというか、K先輩の話は全部盛りすぎてて真実味がないんです。
そして更に面白くないんです。
ですが面白くないことが面白くて、私はいつもうんうんと食い気味に話を聞いていました。
週一で都内から来る若いドクターと付き合っていると言うK先輩
その病院は田舎の病院でしたが、週に一度東京から循環器内科の若いドクターが派遣されて来ていました。
その病院には年寄りドクターしかいなかったので、やはり若いドクターが病棟にいると新鮮でした。
K先輩はそのドクターと自分は付き合っていると言っていました。
「この前先生が帰るとき、駅で待ち合わせして一緒に東京に行ったの。」
と頬を赤らめながら言っていました
さすがにその話は嘘だろうと思いました。
いくらなんでも無理があるしね。
ちょいちょい何か盗まれる職場
その職場はちょいちょい何か盗まれる職場でした。
ボールペン、カバンに入っていたはずのもの、お金。
この病棟はいろんなものがなくなるから気をつけた方がいいよ、と職場の先輩も教えてくれました。
ナースステーションのすぐ隣にスタッフの休憩所があって、そこはただ本棚で区切られているだけの空間でした。
つまり、誰でも入ってこれる場所でした。
そういうことも原因なのかなと思っていましたが、大体のスタッフはK先輩を疑っていました。
実際、患者さんの家族からお金を預かっている時など、K先輩は教えてもらえていませんでした。
K先輩自慢の家族と家
K先輩はお父さん、お母さん、弟の4人家族でした。
お父さんは消防士だと言っていました。
家族の話、特に弟の話は良く聞かせてくれました。とてもK先輩と仲が良いと感じさせる話題ばかりでした。
K先輩は地元で花火の有名な場所に住んでいて、花火大会の日は3階建ての自宅の屋上でみんなで花火を観るというのがK先輩の自慢でした。
その花火大会は全国でも有名な花火大会で毎年混雑が激しいので、純粋に羨ましいなぁと思っていました。
わりと無理な理由で突然仕事を休むK先輩
K先輩は、体調不良以外でも時々仕事を休むことがありました。
1番強烈だった内容は、母親が事故にあってレベル300なので休みたいという理由でした。
レベル300というのは医療用語で、正確にはJCS300。つまり、痛み刺激に目も開けず、顔をしかめることもない、意識不明の状態です。そう、かなり重篤な状態です。
ですが、次の日には治ったと言ってケロッと出勤してきました。
ここまで行くともうみんなも半笑いです。
ついに逮捕されてしまったK先輩
これは私が職場を去った後の話ですが、K先輩はついに逮捕されて地元の新聞に載ってしまいました。
理由は窃盗です。
職場の人のカバンから10万円単位のお金を盗んでしまいました。
そこからついに警察の捜査が入り、K先輩が逮捕されてしまいました。
先輩の家からは、盗んだものが大量に出てきたそうです。
全部嘘だったK先輩の話
逮捕をきっかけに、K先輩の話が嘘だったことが次々に判明しました。
その嘘の中には、私たち全員が信じていたこともありました。
3階建ての家ではなく、アパートに住んでいたこと。
実は母子家庭だったこと。
再生不良性貧血なんて患っていなかったこと。
その話を聞いて、しばらく絶句しました。
嘘だ嘘だとは思っていたけど、まさかそこまで嘘だったなんて、、、。
わたしはその時初めて、世の中には本当に嘘をつく人がいると知りました。
最後に
以上が私の忘れられないK先輩の思い出です。
今でも時々思い出してしまいます。
今K先輩はどこで何をしているのでしょうか。
なぜK先輩は、あんなにも嘘をつかなければならなかったのでしょうか。
それともK先輩にとっては嘘ではなかったのでしょうか。
こうだったらいいなと考えて行くうちに、嘘と現実の境目が曖昧になってしまったのでしょうか。
だとしたら、何がK先輩をそうさせてしまったのでしょうか。
考えれば考えるほど、やるせなくなってしまうのです。
K先輩は今でも嘘をついているのでしょうか。
K先輩が、どこかで幸せに暮らしていることをひそかに願っています。