前回までの記事はこちら。
陣痛の痛みで失神した私。31歳、17時間にわたる出産体験①
陣痛の痛みで失神した私。31歳、17時間にわたる出産体験②
5リットル酸素、吸引カップ、頭、指、指。
14時間にわたる、経験したことのない痛みを耐え抜き、やっと、やっと、やっとの思いで分娩台へ。
やっと産める。
「今、生まれてくる準備してるよ」
もうすでに意識がもうろうとしている私の耳に、夫からの朗報。
ここまで本当に長かった。
いきみたくなったら自由にいきんでよし!!
とうとうテレビとかでよく見る、分娩台のヒッヒッフーの時間!
初心者ながらに思いのままにいきんでみる。
ん?
ん?
ん?
まったく出てくる気がしない。
しかも何時間もの陣痛を、歯をくいしっばって、ベッド柵が折れるかと思うほど握りしめて、全身の力で耐えていた私には、もう体力が残ってない。
ライフがゼロです。
いきむときに、横にあるバーにつかまって、体を起こしていきむように言われるけど、
私にはそんな体力もう残ってないんです。
ライフがゼロなんです。
体を起こすことさえもう苦痛でございます。
そんな私の心の声が聞こえたのか、夫が私の背中を支えてくれる。
そう、それ!それよ!
めちゃくちゃ楽じゃん!何とかいけそうな気がするー!
もう何回いきんだだろう。
もう何時間経っただろう。
さっきお昼休憩に行ったはずの助産師さんが戻って来てる。
もう1時間は経ってる。
いつ?
いつ生まれるの?
何が限界かって
もう股関節が限界なの。
こんなに長い時間、股は開けないの。
そんな風に私の体は作られてないの。
「股関節が痛くてもう無理です。」
そこ!?
ってたぶん思われたとは思うけど、
さすがそこはプロ。
動じることなく、「じゃあ陣痛来てない時は閉じましょう!」と。
閉じていいんだ。
その後も私のいきみは続く。
正気と狂気のはざ間を行き来しながら。
もう何時間こうしてるのか、ここはどこなのか、私は誰なのか。
早く吸引してほしい。
私では力不足です。
そのあたりで助産師さんから
破水させますね!
と声がかかりました。
そうだ。。。
まだ破水もしてないじゃん。
その瞬間、なまあたたかいものが流れてくるのを感じました。
ここから一気にお産がすすむ。
のかと思いきや、
出てこない。
そうこうしてるうちに、
陣痛計のアラームが鳴り始める。
そこはいくら狂気の沙汰でも、看護師のはしくれとしては無意識に目が行く。
やばい、やばいやつや。
モニターはベビーの心拍が下がっていることを示している。
こんなところで息子を死なせるわけにはいかんのやー!
ここまで来て帝王切開なんて絶対むりやー!
ここで私は覚醒した。
「お母さん!鼻からいきしっかり吸って!」
「酸素マスク着けますよ!」
人生初の酸素マスク装着。
ここは看護師のさが。
今何リットルなん?
3リットルか。
3リットル吸ってるんだな!?
鼻から息吸えばいいんだな!?
吸えばいいんだよな!?
それでもベビーの心拍は上がらない。
このあたりからドクターも呼び出されて参戦。
お母さんもモニターつけなくて大丈夫?
助産師。
はい大丈夫です。
即答。
大丈夫じゃねーよ!死にそうだよ!
気づけば酸素は5リットル。
はぁはぁしすぎてマスク内の水滴がすごい。
そこは看護師の夫。すかさずマスクを一瞬外し水滴を拭き再装着。
その作業を何回繰り返しただろう。
なんどいきんでもベビーが降りてこない。
そろそろベビーも母体も限界。
お母さん、赤ちゃん出てこないので吸引で引っ張ってだしますね。
やっと産める。
吸引分娩へ
いっそ早く引っ張って出してほしかった。
夜中に隣で産んだ人は吸引であっという間に生まれてたじゃん。
やっと終わる。
吸引の前に会陰切開。
まず麻酔。
わりと痛い。
そのあとついに会陰を切られる。
ちょっと!普通に痛いじゃん!誰だよ痛くないって言ってたやつ!
麻酔から切開までのドクターの手際のいいこと。
一回も陣痛を見送ることなく、次の陣痛で
吸引しますよ!はい!いきんで!
待って、そのカップどれほどの大きさ?
ものすごく痛いんですけど。
陣痛は痛いわ、股は痛いわ、さんざん。
でももう私はそれどころじゃない。
ここまで来て帝王切開にはなりたくない!
もうこれ以上どこも切られたくない!
何でもいいから、頑張るから!
しかし一回の吸引では出てこず。。。
陣痛が来るたびに吸引カップを入れられ、引っ張られるけどベビーが出てこない。
5回くらい繰り返したところで、やっと頭が降りてきたのがわかった。
そこで陣痛の波が引くと、またベビーが戻っちゃうから、先生も助産師さんも必死。
次の陣痛が来るまで、先生の指と助産師さんの指でベビーの頭をつかんだまま待つ。
つまり私の股には、ベビーの頭が挟まってる上に先生と助産師さんの指が挟まってる。
何これ、超痛いんですけど。
完全に今お尻の方まで裂けたのがわかったんですけど。
でももうそんなことは言ってられない。
もはやここにいる誰もが限界来てる。
お母さん次で出しますよ!はい!いきんで!
こっちもあの痛みを無駄にするわけにいかないからマジで必死。
これ以上いきめないくらい、最後の力を振り絞る。
先生も助産師さんも今回は絶対に逃すまいと必死。
私の股にはベビーの頭と吸引カップと先生の指と助産師さんの指。
もうお願い!これ以上私の股には何も挟めないから早く出てきて!
という願い。
はい!頭出ましたよ!
今度は手をお腹に乗せて短くはっはっと息してください!次で生まれますよ!
頭も痛かったけど、肩が挟まってるのも地味に痛いしね。
次の瞬間
生まれますよー!
ズルズルズル~!
え、なにこの感覚。出てきていいやつだった!?
おめでとうございます!うまれましたよー!
やった。やっと終わった。
夫を見ると、私の汗を拭いてたタオルで自分の涙拭いてる。
たぶん、生まれた感動とかじゃなく、やっと終わった安堵から来た涙。
わかる。
あたしもそういう気持ちよ。
やっと終わったの。
あの永遠のように長い戦いが。
もう終わりは来ないんじゃないかと思った戦いが
今やっと終わったの。
はじめまして。私がママです。
夫にへその緒を切ってもらって、すぐに抱かせてもらったベビーは
本当に小さくて、つぶれた顔で、血まみれで、紫色で、必死に生まれてきたことを全身で表していて。
さっきまでお腹の中にこの子が入っていたなんて。
こんなに完成されたものが私の中にいたなんて。
言葉では言い表せない神秘。
無条件に感じる愛おしさ。
世界中のどこを探しても、これ以上に感動する出会いはないと言い切れる。
我が子よ。初めまして。
縁あって、私とあなたはこれから一緒に生きていきます。
11月1日、午後2時3分。
待望の長男誕生。
最後に
長らくお付き合いいただきありがとうございました。
1人目の出産はとても辛く、長く、大変で、もう二度と産みたくないと思っていましたが、二人目の出産は3時間40分でした。
次男がスルッと生まれて来れたのも、長男が苦しい思いをして頑張って道を作ってくれたからですね。
出産は本当に毎回違うものなんですね。
これから出産を迎えるみなさん。
素敵な出会いになることを願っています。